HOME / 特殊生殖医療部門 / 特殊生殖 / 減胎手術 / ガイドライン
   d  d  d

Special Reproduction

特殊生殖  ー 減胎手術

ガイドライン

医療法人登誠会諏訪マタニティークリニック
1986年2月4日作成
2009年4月1日改定



 「減胎手術」に関しては、国の法的な位置付けはまだ明確ではありません。そこで、当病院では下記のガイドラインを独自に定め、患者さん・ご家族にも了解し宣誓していただいた上で実施します。
なお、施術に関してのお問い合わせは、当院窓口にお電話ください。
TEL 0266-28-6100(代)



第一項:減胎手術とは

 自然に、または不妊治療の結果、多胎妊娠となった母親に対して、胎児数を減らし、母子ともに安全に妊娠経過させて出産に至らせる方法を「減胎手術」と呼びます。


第二項:実施対象となり得る方

 妊娠22週未満であり、かつ以下のいずれかに該当する方

1.原則として、多胎の妊娠・出産が母子双方に危険を及ぼす可能性がある場合
2.すでに子どもがいて、多胎の養育が母体に悪影響を与える場合
3.基本的には胎児の選別はしません。ただし、胎児診断の結果を踏まえた親の意を、無視できない場合はその限りではありません。


第三項:残す胎児の数

1.基本的には2胎を残すこととします。
2.2胎を妊娠・出産・育児するに耐え得る能力が、母体に乏しい場合(過去に筋腫核出術や帝王切開などの既往がある方や、妊娠により悪化するさまざまな疾患をお持ちの方、上に子どもがいる方など)は1胎のみを残すことも可とします。


第四項:実施方法

 減胎手術にはさまざまな方法が考えられますが、当病院では、妊娠10~11週の時点(過ぎても妊娠22週未満)で、減胎する胎児に塩化カリウム液を注入して心停止に至らせるという方法をとります。
 心停止した胎児は母体に吸収され、吸収されずに残った胎児部分は後の生児誕生の際に卵膜とともに体外に排出されます。

入院期間 3泊4日
 1日目:午後1時頃までに入院、診察後、御主人と共に話しを聞いて頂きますので。この時間帯だけは、必ず御主人が同席下さるよう、お願い致します。
 2日目:手術
 3日目:安静
 4日目:朝診察後退院

持ち物:洗面道具、パジャマ等
※御主人も御一緒に入院できるようになっています。
費用(私費):全て込みで36万円前後


第五項:現行法に対する解釈

 減胎手術は、「人工妊娠中絶手術」の一方法であると見なします。
[理由] 現行の母体保護法が定める人工妊娠中絶手術の定義は、妊娠22週未満までに「胎児を体外に排出すること」とされています。
 塩化カリウム液により心停止した胎児は、残された生児が誕生した際(ケースによりますが、減胎手術から約30週後)に卵膜とともに体外に排出されることから、「30週間近くかけて人工妊娠中絶手術をしたもの」と当病院では解釈します。


第六項:施術者の留意点

 一卵性双胎、一卵性品胎の存在があり得るので、妊娠初期(妊娠5~6週頃)より超音波検査下による胎嚢数及び胎嚢内の胎児数の識別に留意すること


 ※ガイドラインは、国の法整備や諸状況の変化などを踏まえ、また当病院の倫理委員会にて見直しの必要性を受け、適宜改定をおこなうものとします。



減胎手術に対する心得

減胎手術に臨まれる皆様

 このたびさまざまなご事情のもと、減胎手術に臨まれることと存じます。
しかし、減胎手術に関しては明確な位置づけもされておらず国の法律がないため、当病院では 独自のガイドラインに基づき施術をおこなっております。
「減胎手術ガイドライン」と併せてこの「減胎手術に対する心得」もお読みいただき、ご家族 でご確認・ご納得の上、減胎手術に臨んでいただきますようお願いいたします。



1.麻酔に関して

塩酸ケタミンという静脈麻酔による全身麻酔下で施行します。この麻酔薬は妊婦さんに とっても安全な薬であり、当施設においても、既に妊娠中の数千人の患者さんに使用して おりますが、特別な問題は起こっておりません。ただし、薬に対するアレルギーのある方 は必ず事前にお知らせ下さい。

2.施術に関して

腹壁より超音波検査下で針を刺入し、胎児に塩化カリウムという薬剤を注入し、減胎し
ます。この塩化カリウムという薬剤は、カリウムの足りない患者さんへの治療薬として使
用されているものです。
施術上有り得ないことですが、万が一全量が母体に注入されたとしても、母体には、何ら
影響を与えるものではありません。
また、施術は、残す胎児に影響を与えないように、細心の注意を払って施行しておりま
す。
当院での減胎手術は、ほとんどが他施設からの紹介患者さんですが、1986年以来、既に
1000人近くの方に減胎手術を施行しております。初期の数例は別として、施術と関係のあ
る問題例はほぼ皆無といえます。


3.術後感染に関して
完全な消毒下での施術ではありますが、過去1例のみ施術感染を起こし流産された方が
ありました。

4.術後、流・早産に関して
「減胎手術の実際」の本を出版した1998年頃までは、生児を得るまでに至った方は94%
程でした。最近の100数拾例の方では、97~98%の方が生児を得ています。
普通の妊娠・出産において、流・早産等で生児を得られない方は、1~2割{妊娠反応だけ
陽性のままで流産する例(Chemical Pregnancy)まで入れると3~4割}あるとされてい
ます。その内のほとんどの流産は、妊娠7~8週頃までに起きています。現在施術最適妊
娠週数としている10~11週頃までの内に流産する方は、施術前に既に流産(稽留流産)
されていますので、減胎手術後流産する場合は少なく、生児を得るまで妊娠継続する方が
多くなっているのです。もし、妊娠10週前に減胎手術を受けた場合、自然流産するかも
知れない胎児を残してしまうことにもなりかねませんので、他施設で減胎手術を受ける方
は、妊娠10~11週で受けることをお勧めします。
しかし、いくら注意を払って施術しても、自然淘汰されるケースは出てきます。それが
生児を得られない2~3%の方になっていると考えられます。
以上から、2~3%の自然淘汰を考えますと、現在の当施設の減胎手術は、ほぼ完成され
た施術と考えています。


5.術後の経過
特に問題のない方は、普通の生活に戻って頂いて結構です。
術後、一時的に不正出血が少しある方がおられますが、続かなければ心配ありません。
切迫流産状態(不正出血、腹痛等)のまま来院され、減胎手術を希望された方は、状況
を見て施術しますが、お帰りになった後も流産予防の対応を受けて下さい。
2人以上胎児を残される方は、流早産予防のために、子宮頚管縫縮術(シロッカー氏手
術)を受けられることも一策でしょう。いずれにしても担当の先生とご相談下さい。


6.先天異常(奇形も含む)、染色体異常に関して
これ等の問題と、減胎手術とは一切関係ありません。先日、生まれた赤ちゃんに先天異
常があったのは、減胎手術の所為と考え、ご連絡を下さった方がおられました。しかし、
このような胎児の先天異常や染色体異常は減胎手術とは全く無関係の問題であるため、も
し、減胎手術によって残され生まれたお子さんに何か問題があったとしても、一般の出産
における頻度と同様に起こりうるということを御承知ください。


7.減胎された胎児に関して
減胎された胎児は母体に吸収されて、また元のお母さんの体に戻ります。また、その何
万分の幾つかは、残された胎児の体の一部になるでしょう。何人かで走って来た命のリレ
ーが、1人か2、3人にまとめられて、そして新しい命のバトンタッチがなされると思っ
て下さい。

8.減胎手術を受けるにあたって
減胎手術は、「命を残す」「安全に生児を獲得する」ことを目的として行なわれる施術
です。子どもを望んで妊娠したにもかかわらず、妊娠した胎児の数が多いがために、また、
胎児診断の結果を踏まえての、最終的決断を親がしたことにより減胎がなされるというこ
とです。
人間が持ち合わせていなければならない絶対的倫理観の一つとして「人を殺傷してはな
らない」という一項があると思います。減胎手術も人工妊娠中絶も、その一項に反するこ
とは間違いありません。しかし、もし減胎手術をしなければ、また、人工妊娠中絶をしな
ければ、という狭間において、ご自身が熟慮し出された結果であることも間違いないでし
ょう。
熟慮されて減胎手術を選択したにもかかわらず、術後多くの方が罪悪感を持たれること
があります。そして、他に方法があったのではないかと後悔をされることもあります。罪
悪感を持つことも後悔することも人間ですので否定は致しませんが、減胎手術を受けるの
であれば、減胎手術の事実を受け入れて、ご自身の前に存在する減胎手術の結果、助けら
れた命に感謝し大切になさって頂きたいと思います。
罪悪感をいつまでもずっとお持ちになり、後悔し続ける可能性が大きいようでしたら、
最初から減胎手術を受けない方がご自身にも減胎手術によって残され生まれてくるお子さ
んにとっても良いでしょう。
当院のスタッフは残されたお子さんにとっても、また、御家族にとっても減胎手術を行
なうことが少しでもプラスである事を願い、施術に関わらせて頂いております。ですので、
減胎手術をなさることが熟慮の上の決断であり、また残された命に感謝し前向きに向かい
合うというご意志のない場合はお受けすることはできません。


9.残された子どもに関して

前項で述べさせて頂いたように、減胎された胎児もまた望まれて妊娠した子どもです。
ですから、生を受けた子どもと共に、減胎された子どもも一緒に成長していると思いつつ、
全ての命に感謝し、お子さんの成長を見守って下さい。
そして、出来ましたら、生を受けた子どもが成長し20歳頃になったら、「減胎手術を
おこなったこと。去って行った兄弟姉妹のお陰で、お前(達)がいること。去って行った
兄弟姉妹の分まで自分の命を大切にし、頑張って生きて欲しい」とお話をなさることを望
みます。
この事実を、真摯に受け止めることの出来るようなお子さんにぜひお育て頂くことを、
お願い致します。