排卵誘発は、手を加えないと排卵がおこらない、あるいは手を加えないと良い排卵がおこらない患者さんと、体外受精を行なう患者さんが適応になります。大きく分けて以下の2種類の排卵誘発方法があります。
1. 内服治療
患者さん自身の排卵をおこさせるホルモン(下垂体から分泌される2種類のホルモン、FSHとLH)の分泌を亢進させる方法で、内服薬で行ないます。
この種の内服薬には2種類あり、効果の弱い薬はセキソビッド、もう少しだけ効果の強い薬はクロミッドといいます。これらの薬は卵の成熟には効果がありますが、その反面女性ホルモン(エストロジェン)の作用を阻害してしまいます。そのため子宮内膜はやや薄く、頚管粘液の分泌は悪くなる傾向があります。セキソビッドは効果の弱い分、副作用もクロミッドほどではありません。
しかし内服療法では、以下に述べる注射による治療法と比較して、重篤な副作用はありませんし、体に対する大きな負担もありません。
2. HMG-HCG療法
もう一つは、外からFSH、LHのホルモンを投与する方法です。HMG製剤(パーゴナル、ヒュメゴン、パーゴグリーン、フェルティノームPなど)の注射を行ないます。
この方法は連日の注射が必要です。卵胞が至適な大きさになったところで、HCGという注射に切り換えて排卵をおこします。(HCGの注射がLHサージと同様の働きをもっているため、排卵を引きおこすことができます)
この方法は強力な排卵誘発方法であり、飲み薬で排卵がおこらなかった患者さんにも排卵をおこすことが可能となります。しかし、体外受精の項目でも述べますが、同時にいくつかの重篤な副作用が起きる可能性があります。
副作用
a)卵巣過剰刺激症候群(Ovarian Hyperstimulation Syndrome、OHSS)
強力に排卵をおこすことにより、卵巣が大きく腫れあがることがあります。通常3cm程度である卵巣が、排卵の前には4〜6cmになり、排卵後には6〜10cmにもなります。このため下腹部の張り感と多少の痛みが起きます。
また大量の女性ホルモンがでるために、お腹の中に水(腹水)が溜まります。自覚症状としてはスカート等の腰周りがきつくなり、体重が増加します。また口の渇きを感じ、ひどいときには胸水も溜まります。血液は濃縮されて固まりやすくなり、血栓症(脳梗塞など)を起こすことが、ごく稀にあります。(今まで数例の報告があります)
上記のような自覚症状がある場合には、すぐに病院に来ていただく必要がありますし、入院管理が必要になる場合もあります。妊娠していなければ1週間ほどで症状は治まってきますが、妊娠した場合にはこの症状は継続し、3カ月位続くこともあります。
b)卵巣茎捻転
大きく腫大した卵巣が捻れてしまう場合があります。卵巣(の茎部)が捻れると卵巣に流れ込む血液がストップしてしまうために、卵巣の組織の壊死(組織が死んでしまうこと)が起きてしまいます。口では言い表せないくらいの激痛、七転八倒の痛みが特徴的な症状です。滅多に起きることはありませんが、不幸にしてこのようなことになってしまった場合には、緊急開腹手術を行ない、卵巣を摘出せざるを得ません。
c)多胎妊娠
この治療法を用いると、多くの卵が一度に排卵するため、多胎妊娠になる場合があります。その中でも多くは双胎です。3胎、4胎となることは極めて稀ですが、可能性はあります。

